東方キャラで語る飛行機の歴史 その4


「さて、また今回も私らが呼ばれたわけだけど・・・」


「今回で4回目ともなると結構慣れてくるわね〜。でも大丈夫なの?今管理人は社会人で忙しいんじゃ?」


「休みがある限りは書くぞ!という意気込みのようね、結構いい気分転換になるみたいだし」


「ふーん。で、今回はどんな飛行機をやる予定なの?」


「今まではイギリス、フランス、アメリカと来たから・・・」


「今回はソ連シルヴァンスキーI−220戦闘機を扱う予定ね」


「お、今度は東側の機体なんだな。」


「相変わらず全然聞いたことは無いけど・・・」


「最初にちょっと解説しておくと、第二次世界大戦前後のソ連の飛行機っていうのは中央流体研究所(TsAGI(ツアギ))*1のほうで考えた空力設計と基本配置をあちこちの設計局でまとめて、それでうまくいけば量産開始という流れだったのね。後に有名となるミコヤン*2とかスホーイ*3といった設計者も最初はツポレフ*4とかポリカルポフ*5みたいな先輩設計家の元で修行を積んでいたのよ。」


「どこの国でも下積み時代は大変ねえ・・・」


「それでも、たまに運良くすぐに設計局を作ってもらえる人もいるのね。今回の飛行機を作ったA・V・シルヴァンスキーもそんな人なの。この人は1937年に戦闘機開発の許可をもらって1938年には設計局を作ったのよ」


「へぇ・・・で、その前はどんなことやっていたんだ?やっぱり航空関係の何かかな」


「実はそれについてはよく分かっていないの。ただ、飛行機の設計や開発に深く関わっていないことは確からしいわ」


「よくそれで戦闘機開発なんて出来たわねぇ・・・」


「まぁ、さっきも言ったとおり基本的な配置とか空力設計は先に考えていられるからね。このシルヴァンスキーIー220も空冷エンジンに太短めの機体と、当時のソ連の基本配置*6に忠実な作りだったのよ。ちょっと脚が短めだったけど。」


参考:当時のソ連の主力戦闘機I−16


「確かにそれならまともな飛行機になりそうだな。ところで、武装はどんなもんだったんだ?」


「この飛行機の場合7.62ミリ機銃を4門装備の予定ね」


「まぁ、30年代後半なら標準的な装備ね。」


「そんなこんなで比較的機体作成は順調に進んでいたんだけど、完成間近になって一つ問題が出てきたわ。プロペラと地面が間隔が近すぎて下手すると地面にぶつかりそうになったの。」


「・・・それって、何をどうしたか設計が間違ってて脚の長さが足りなかったってこと?」


「おいおい・・・でも、それなら脚を長くすればいいんじゃないのか?」


「いいえ、この戦闘機の場合引き込み脚*7だったから下手に脚を長くすると引き込み部分の設計も変わってくるし、そうなると胴体とか翼の兼ね合いも合ってかなり大掛かりな改設計になってしまうのよ。」


「固定ならすぐ伸ばせばいいんだけどね・・・それで、問題はどうやって解決したの?」


「ここで経験の少なさからシルヴァンスキーは実に大胆な解決策を出したわ。それについては下を見てね。」



イメージ映像


「うーん、困った・・・まさかここで脚の長さが足りないなんて」


「納期も迫っているから大掛かりな改設計なんてやってる暇無いし・・・」


「あーもう、固定脚ならすぐ伸ばせるのになぁ!」


(シルヴァンスキー、それは無理やり脚を伸ばして解決しようとするからだよ。逆に考えるんだ、いっそのことプロペラの方を縮めようと考えるんだ)


「そうか!脚を伸ばすんじゃなくてプロペラをちょっと切っちゃえばいいんだ!」


「これなら金ノコとヤスリだけですぐできるね!」


「これで地面にプロペラがぶつかる心配もなくなるよ〜」





「・・・・・・」


「・・・ねぇ、飛行機のプロペラってそんな簡単に切っちゃっていいものなの?」


「まぁ、それについては後で明らかになるわ。ともかくシルヴァンスキーI−220は1939年に完成、モスクワのLII*8でテストされることになったわ。」






イメージ映像


「さて、いよいよ新型機の初飛行ね、早速行くわよ〜」


「・・・あれ?あれ?どうなってるの、なかなか離陸できないじゃない!?」


「ちょ、ちょっと!?離陸できたはいいけど全然上昇できないわよ!?」


着陸後


「どういうこと!?あの飛行機は離陸にも時間かかるうえに高度300メートルまでしか上がれないじゃない!これは重大なサボタージュよ!」


サボタージュなんてとんでもない!」


「そうだそうだ!」


「何にも変なことしてないよ!ただプロペラ切り縮めただけだって!」


「・・・・・・今なんつった?」






「・・・・・・」


こ れ は ひ ど い


「そりゃ勝手に切ったりすればプロペラの性能ガタ落ちするわなぁ・・・」


「そんなわけで、LIIのパイロットもTsAGIのパイロットもI−220をまともに飛ばすのは不可能と判断、開発は中止されたわ」


「まぁ、当然だわな」


「しばらくしたあとにシルヴァンスキーの元に政府の役人が現れて設計作業の禁止と航空工業からの追放を宣告したわ。これで設計局も解散することになったのよ」


「・・・ねぇ、当時のソ連ってスターリンの時代よね?これだけで済んだの*9


「それについても不明なままね」


ソ連の飛行機設計は地獄だな・・・」



出演:十六夜咲夜
   博麗霊夢
   霧雨魔理沙
    アリス・マーガトロイド
  レティ・ホワイトロック
    ⑨
    ルーミア
    みすちー


アイコン提供  ぶらんけっと様
         みょふ〜会様


参考資料  

世界の駄っ作機〈3〉

世界の駄っ作機〈3〉

*1:詳しくはコチラ参照 TsAGI - Wikipedia

*2:アルチョーム・イヴァーノヴィチ・ミコヤーン ロシアの航空機設計局、ミコヤングレビッチの創設者

*3:パーヴェル・スホーイ 航空機の設計、製造を行うロシア指折りのメーカー、Sukhoi(スホーイ)設計局の創設者

*4:ロシアの飛行機デザイナーでツポレフの創業者

*5:ロシアの飛行機デザイナー。世界初の引き込み脚単葉機であるI−16を設計

*6:たとえばI−16のような

*7:読んで字のごとく飛行機の脚を翼に引き込む機構。空気抵抗の削減などに役立つ。

*8:航空工業省研究所

*9:こんなことも起きてるし 大粛清 - Wikipedia