東方キャラで語る飛行機の歴史 その5
「なんとか管理人も時間を取れているようね、来週にはこれに行くようだし」
「ところで、今回はどこの機体をやるんだ?今までイギリス、フランス、アメリカ、ソ連と来たわけだけど・・・」
「ええと、今回はイギリスの双発攻撃機ブラックバーン・ボウタね。」
ブラックバーン・ボウタ
「最初に解説しておくと、この機体を作ったブラックバーン社は主にイギリスの海軍機を作っているメーカーで、最近まで現役だったバッカニア攻撃機 *1が最後の作品となっているわ。海軍機のメーカーだったので生産数が多い機体は少ないんだけど、その中でもっとも多数、850機作られたのがこのボウタだったのね。」
「まぁ、海軍機はそんなに数が出ない*2からなぁ・・・」
「でもこれに出てくるって事はきっと何かある飛行機なのよね。」
「で、このブラックバーン・ボウタなんだけど、1935年に空軍によって要求が出されたわ。仕様は沿岸軍団*3 向けの双発攻撃機。」
「1935年って言ったら結構世界がきな臭くなってくる時期*4よね・・・」
「36年からはHOI*5のシナリオが始まる時期だしな」
「そう、世界情勢が風雲急を告げる状態だったせいで空軍は設計段階でボウタを量産発注しちゃったの。つまりこの機体には試作機が無くて1号機から量産機になったのよ。」
「え、それってまずくない?普通試作段階でいろいろ細かい問題を解決してから量産開始なんじゃ・・・」
「多分設計まとめている間に待っていられなくなったようね。1号機が初飛行したのは1938年になってからのことだし。」
「後1年で戦争*6が始まるな・・・」
「880馬力のブリストル・パーシューズエンジンの双発ね。ただ、設計段階から馬力不足が明らかになっていたので会社のほうはもっと強力なブリストル・ハーキュリーズエンジン*7変えようとしていたの。でもこのエンジンは別の新型機*8に使うということで回してくれなかったの。」
「それでも、1号機の初飛行はなんとか滞りなく終わったわ。ただ、いろいろな欠点が山ほど出てきたけど。」
ブラックバーン・ボウタに乗ったテストパイロットの証言(イメージ映像)
「おい、とりあえずエンジンの馬力不足は何とかならないのか?」
「あの、これ失速速度*9が高くて気を抜くと失速*10しそうになるのですが。」
「きゃー!コクピットにエンジン排気やガソリン蒸気が入ってきますー!」
「銃座を旋回させたらいきなりバフェッティング*11起こしたわよ!どういうこと!?」
「縦安定*12操縦性が決定的に不足している・・・こんな飛行機では戦えない」
「というかこの手のミスは試作段階でどうにかするもんじゃないのか・・・?」
「まぁ、さっきも言ったとおり設計中に量産発注しちゃったのが裏目に出たのね。極めて批判的な報告書が出た時には既に量産が進んでいたの。」
「1940年の半ばから沿岸軍団の第608航空隊に配備が始まったわ。でもあんまり酷い飛行機だったのでこの航空隊以外には配備されずじまい。」
「1940年半ばといえばイギリス危急存亡の夏*13、イギリス軍としても飛行機が必要だったようね。例えそれがどんな飛行機でも。」
「それが、1940年6月から11月までに出撃308回、敵との接触はなし、事故で2機喪失。これが戦歴の全てね。」
「結局まともに戦闘しなかったってことね・・・あれ、11月からはその航空隊の装備はどうなったの?」
「あぁ、以前使っていたアブロ・アンソン哨戒機*14に逆戻りしたようね。」
「その後ボウタは航法とか機上無線とか空中射撃の訓練に使われたんだけど、やっぱり評判が悪かったようね。いろいろ改良したりエンジン強化したりしたんだけど根本的には変化なし。しかも、1940年から43年まで使われた478機のうち169機が事故で失われているの。」
「そうね、24機がエンジン故障で不時着したりしているわ。他には・・・離陸滑走中にトラックに激突したりとか他のボウタと空中衝突したりとか。」
「しかし一番作られた機体がこの有様でよく会社が持ったわねぇ・・・」
「戦時中はソードフィッシュ*15とかサンダーランド飛行艇*16みたいな他社の機体生産とか、あとはアヴェンジャー*17やコルセア*18のイギリス仕様への改造で結構忙しかったようね。あと、このブラックバーン社は他にもネタになる機体を作っているから今後も登場するかもね。」
出演:十六夜咲夜
博麗霊夢
霧雨魔理沙
涼宮ハルヒ
キョン
古泉一樹
朝比奈みくる
長門有希
アイコン提供 ぶらんけっと様
し〜くれっとも〜ど様
参考資料
- 作者: 岡部ださく
- 出版社/メーカー: 大日本絵画
- 発売日: 1998/12
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%A2_(%E6%94%BB%E6%92%83%E6%A9%9F)
*2:空母艦載機とかがメインになるため
*3: 沿岸軍団 (Coastal Command)
沿岸軍団は海からの脅威に航空機で対処するため1936年に組織された。空軍以外にもイギリス海軍の艦隊航空隊からも航空機を貸与されていたが、当初は旧式機しか供給されず、ドイツのUボートを相手に苦杯をなめた。
*4:アドルフ・ヒトラーがヴェルサイユ条約を破棄し、ナチス・ドイツの再軍備を宣言したり、イタリアがエチオピアに侵攻している
*5: スウェーデンのパラドックスインタラクティブが発売している歴史シミュレーションゲームのシリーズ。第二次世界大戦をテーマとしており、1936年から1947年(1953年)までの期間で、プレイヤーは当時存在していた国(独立勢力)の中の一つを選んでプレイすることになる。基本的には枢軸・連合・共産の3つの陣営のいずれかに参加して大戦に参加することになるが、そういったことに囚われないプレイも可能である。Europa Universalis (EU) シリーズと同じゲームエンジンを採用しており、同様に歴史的な出来事を歴史イベントという形で再現している。ゲームシステムは1時間ごとに進んでいくリアルタイムストラテジー。
*7:こちらは1500馬力は出たようだ
*9:それ以上速度を下げると失速するという速度。
*10:翼面から層流が剥離し、十分な揚力を得られなくなった状態のこと。ストール。翼が揚力を得るためには層流が必要である。しかし、迎角を高くしすぎたり、速度が遅くなりすぎると、層流の状態が乱れ、翼面から層流が剥離して乱流を形成し、主翼が機体を支える十分な揚力が無くなるのである
*11:飛行中の機体に生ずる振動の一種。原因は大別して,低速,大迎え角で飛行しているときに翼が部分的に失速し始め,それによって生じる渦を伴った気流が尾翼に当たり振動を起こす場合と,ジェット機が高速,小迎え角で飛行しているときに衝撃波によって境界層が剥れ,低速飛行時の失速と同様に,機体に振動を起こさせる場合の2種類に分けられる。バフェッティングは,このように低速でも高速でも発生することがあり,また飛行高度が変化しても発生の様子が異なってくるので,飛行機の巡航速度および巡航高度の定める場合に考慮すべき重要な要素の一つである。
*12:縦安定(longitudinal stability)機首の上下方向の動き,すなわちピッチングに関する安定性であり,飛行機がある迎え角で釣り合って飛行しているときに,何らかの原因によって釣り合いがくずされて,迎え角が変化した場合,元の姿勢に戻ろうとする性質である。この縦安定は一般的に,水平尾翼の働きによって得られている。縦安定は重心の位置に大きく影響され,重心が後方にあると安定性は悪化し,逆に前方にあると安定性は向上する
*13:なにしろバトル・オブ・ブリテンの真っ最中である
*14:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)
*15:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5_%28%E9%9B%B7%E6%92%83%E6%A9%9F%29
*18:http://ja.wikipedia.org/wiki/F4U_(%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F)