東方キャラで語る飛行機の歴史 その6
「そのようねぇ・・・世間ではGWなのに何やってるのかしら管理人。」
「今回は・・・ええと、フランスの艦載戦闘攻撃機シュド・ウェストSO8000ナルヴァルね。」
「あれ、でもフランスって第二次世界大戦当時ろくな空母*1持ってなかったんじゃ?」
「その通りなんだけど、戦争が終わった時にアメリカとイギリスから空母*2を貰ったようね。そんなわけで、フランス海軍は運用経験も満足に無いのにいつの間にか艦隊航空兵力を持つ海軍になったのよ。最初のことはイギリスやアメリカから貰った艦載機を運用していたようだけど、やっぱり国産機が欲しいということで作られたのがこの飛行機。」
「ぱっと写真見た限りでは推進式*3のようだけど、脱出とかはどうする気なのかしら?」
「その辺はフランス人もちゃんと考えていて、射出座席を採用していたわ。」
「で、機体性能のほうは最高時速730キロ、航続距離4500キロを予定、武装は20ミリ機関砲を6門に爆弾を1000キロ搭載する計画ね。」
「また凄い性能ねぇ・・・やっぱり戦後のフランス航空業界って戦争中の空白*4を取り戻そうとかなり舞い上がっていたようね。」
「えぇ、まずこの機体にはイギリスのロールスロイス・グリフォンエンジンを搭載する予定だったんだけど、諸般の事情で手に入らずじまい。代わりにイスパノスイザ12Hエンジンを使おうとしたんだけど、コチラは開発が難航していつ完成するのか分からない状況だったのよ。」
「大丈夫なの?なんかこの時点でものすごくいやな予感がするんだけど・・・」
「結局エンジンはドイツから終戦のどさくさに紛れて手に入れた*5ユンカース・ユモ213を使うことになったわ。」
「どさくさに紛れて手に入れたって魔理沙みたいね・・・」
「まぁそれ以外は開発は順調に進んだようで、1949年には初飛行にこぎつけたんだけど、ここから問題が続出し始めたの。まず低速では横安定*6が怪しくって、高速になれば次は縦安定*7が怪しくなったり。しかも燃料の量によっては機首が急に上がったりする癖まで付いていたわ。」
「それってどれも駄目ってことなんじゃ・・・設計段階の時点で何か問題があったんじゃないかしら?」
「いいえ?もちろん最初に予定していた最高速度730キロにはまったく届かなかったようね。一説には200キロも遅かったという説もあるくらい。」
「何をどうしたらそこまで性能落ちるのかしら・・・原因はエンジンなのかしら?」
「・・・結論からいうとそのどれもが全部怪しかったようね。例えばプロペラはフランスのショーヴィエール社製のを使っていたんだけど不具合が続出してイギリスのロートル社製に交換されたわ。あと、エンジンもエンジンで故障続き*8。危ないから毎分3000回転以上回すのを禁止されたの。」
「そんなわけで、1950年に提出された報告書にはこんな記述が並んだわ。」
1950年に提出されたシュド・ウェストSO8000ナルヴァルに関する報告書(イメージ映像)
「当然ながらこの報告書を受けてシュド・ウェストSO8000ナルヴァルの量産は即刻中止にされたわ。」
「でもシュド・ウェスト社はこれ以前に70機の量産を見込んで生産ラインを整備していたようね。」
「いや、それはそれで見上げた根性かもしれないけど・・・何か間違ってないか?」
「でもこういうの見る限り戦後のフランス航空業界ってまったく基礎体力とかそういうのが回復してなかったようね・・・」
「あれ?でも戦前も結構フランスはひどい飛行機作ってなかったっけか?」
アイコン提供 ぶらんけっと様
参考資料
- 作者: 岡部ださく
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*1:一応空母はありましたが1隻きり、しかも低速のしかなかったのです
*3:航空機においてプロペラが機体後部に設置されている形式のことで、プロペラの回転によって生ずる空気の流れは機体を"押し出す"形になる。これに対して牽引式(トラクター式、Tractor configuration)では、プロペラが機体前部に設置されるため機体を"引っ張る"形になる。
*4:第二次大戦では速攻ドイツにボコられた
*5:盗ったともいう
*6:横安定(lateral stability)飛行機の左右の傾き,すなわちローリングに関する安定性のこと。機体がロールを起こしたとき,自然に元の釣り合い位置まで戻る性質である。飛行機には,直接傾きを戻す力は働かないが,傾くと結果として,横滑りを生じる。この際,主翼に上反角があると,滑った方の翼に大きな揚力が生じ,傾きに対する復元力が働く。これを上反角効果(dihedral effect)という((5)バンク角参照)。このような場合,横安定は正であるという。
*7:縦安定(longitudinal stability)機首の上下方向の動き,すなわちピッチングに関する安定性であり,飛行機がある迎え角で釣り合って飛行しているときに,何らかの原因によって釣り合いがくずされて,迎え角が変化した場合,元の姿勢に戻ろうとする性質である。この縦安定は一般的に,水平尾翼の働きによって得られている。縦安定は重心の位置に大きく影響され,重心が後方にあると安定性は悪化し,逆に前方にあると安定性は向上する
*8:やはりドイツ人のエンジンをフランス人が使うのは無理があったのだろうか