萌える春秋戦国史「しゅん☆じゅう」  その12


さて、今回で萌える春秋戦国史も12回目ね。


ここのところ忙しいのと年末はコミケなので年内の更新はこれで最後になるかもしれません。





魯の首都・曲阜


ふぅ・・・以前の斉との戦いで受けた被害は大きい、また戦いにでもなれば敗北は免れないでしょう・・・


臧孫達
魯の名門、臧孫氏の長老。ご意見番的立場で魯荘公を支えた。


一体どうすればいいのでしょうか・・・


臧孫辰
臧孫達の孫。幼少時から俊英の名が高く、魯の名臣として名を残した。



・・・失礼します、臧孫達様の屋敷はこちらでしょうか?


ん?私が臧孫達ですが・・・一体何の用でしょうか?


私は魯の郷士(下級貴族)の曹沫というものです。斉に勝つための手段を見つけ、ここ曲阜まで来ました。


曹沫
魯の下級貴族。後に魯の将軍となり、斉と戦う。


斉に勝つ・・・?何か勝つ手段でもあるのか?


まずはこれをご覧ください。


ん?これは・・・合戦場の地図ではないか?それもこんなに・・・


今まで魯近辺の戦場の周辺を調べ、地図に書き表したものです。また、私は先日まで斉に行き、軍の動きを調べていました。斉軍は近いうちに必ず軍を起こします。


なんと!? ・・・それで、貴殿は何を望むのか?


私の望みは、魯を勝たせることです。


・・・分かりました、貴方を殿に紹介する事にしましょう。



一方斉の首都・臨淄


管仲
ふむ・・・てことはやっぱり魯に近いうちに出兵する事になりそうか。


鮑叔
そうね、このところ魯が頻繁に国境侵犯を行っているというから・・・


それで国境守備隊は何だって?


その度撃退しているけど、物資の補給を求めるって。


ふん、そりゃ守備隊が戦功と横流しする物資欲しさにでっち上げてるんじゃないのか? まぁ、でも高徯殿はやる気になってるからなぁ・・・


そうね・・・



魯都・曲阜


魯荘公
よく来た、臧孫達から話は聞いたわ。近々斉軍が魯に侵攻してくるとのことやけど・・・


はい、必ず。 ・・・ところで、殿はどのような心構えで戦いに望みますか?


心構え?・・・そうやな、衣食を独占せず、必ず人と分かつ、か?


いえ、それは小さな恵みに過ぎません。そのような事では民は従わないでしょう。


神を祭るにしても偽りを申さず、いけにえや玉絹はありのままに申し上げているわ。


それは小信であって大信ではありません、そのような事では神は幸福を与えないでしょう。


・・・民の訴えは必ず真心を持ってあたり、民の利益を守ってるわ。


それは忠に類するやり方です。そのお心がけなら斉と一戦できましょう。どうか私もお連れください。


おお、戦わでか。よし、曹沫、そちにはうちの車右をしてもらう! ・・・ところで、今度斉はどこを目指して進軍してくるの?


私が調べたところでは長勺(山東省曲阜県の北境)を目指して進軍してくるようです。


そうか、よし、急いで軍を整えよ!



魯・長勺の地


魯軍将校
殿!斉軍が現れました!数はおよそ我が軍の1.5倍!


来たか!しかしかなりの数を集めたもんやな・・・


殿、心配はございません、斉軍は数こそ多いですが先の勝利で我が軍を侮っています。そこに付け入る隙が有ります。


高徯
さて、ここまでは魯軍の姿は見えなかったが・・・いつ出てくる?


斉軍将校
見えました、魯軍です!しかし大した数ではありません!


よし、戦法は正攻法!正面から突破する!戦鼓を叩け!


斉軍兵士
ウラーーーーーーー!!!



敵軍、戦鼓を叩きました!突撃してきます!


来たか、よし、こちらも・・・


いえ、まだ戦鼓は叩いてはいけません。


何?


ともかく今はお待ちを。


ふむ、魯軍は動きなしか・・・よし、再び戦鼓を叩け!


くっ・・・まだなんか?このままでは斉軍の勢いに飲まれてしまうで?


・・・まだです。


よし、もう一度戦鼓を叩け!一気に魯軍を叩く!


・・・! よし、今です、戦鼓を叩くと同時に全軍突撃を!


わかった!



魯軍兵士
ウラーーーーーー!!!!


な、と、突撃して来た!?


く、後退、後退!


・・・?なんだと、我が軍の先陣が崩れた!?


敵は動揺している、一気に中央を突破しなさい!


ウラーーーーーーー!!!


まずい、このままでは総崩れになる・・・全軍退却!


よし、敵は逃げるようやな。早速追撃に・・・


いえ、お待ちを。・・・・・・・・大丈夫ですね・・・よろしいでしょう、追激戦に移ります。


魯都・曲阜


今回の戦功第一は曹沫やな。よくやってくれたわ。 ところで、どうして斉軍が三回目の戦鼓を叩くまでこちらは叩かなかったんや?


戦いとは勇気そのものです。斉兵は最初の戦鼓でこそ勇気を奮い起こしますがここちらが応戦しないので二回目ではその勇気は衰え、三回目では既に勇気が尽きかかってしまったのです。一方こちらは最初の戦鼓で勇気が奮い立ちます、ゆえに勝ちました。


なるほど・・・では最初に追撃を命じかけた時に止めたのは?


それは車の轍を調べるためです。もし退却が見せかけのものであり、伏兵があるものでしたら轍に乱れはないはず。しかし、轍は乱れており、本気で逃げているわけです、念のため敵の旗も調べましたが乱れており、伏兵、援軍はないと判断しました。それで追撃を命じたのです。


ふーむ、まったく理にかなったものや。ところで、これで戦いは終わると思うか?


いえ、こちらも兵数の限界で徹底的には斉軍を叩けませんでした。おそらく、近いうちにもう一度・・・他国と連合して攻めてくるでしょう。


斉都・臨淄


管仲!大変だわ、魯に攻め込んだ我が軍が大敗したそうよ!


なんだって!?一体誰にやられたんだ?魯にそんな優秀な将軍はいなかったはずだが・・・


それが、どうにも今までとは全然違う戦いぶりだったとか・・・


ふーん・・・


殿、申し訳ありません、預かった兵をむざむざ失ってしまいました。


桓公
いえ、勝敗は兵家の常よ。とはいえこのままにはしておけないわね・・・近くもう一度出兵しましょう。


ですが、わが国単独では・・・


そうね・・・魯の隣国の宋と連合して兵を出しましょう。



宋の首都・商丘



隰朋
・・・というわけで、出兵をお願いしたいにょろ。


そうか、まったく斉は情けない・・・まぁいい、我が軍には南宮長万がいる。魯軍など一ひねりにしてくれる!


宋閔公
宋国第十七代君主。在位年は前691〜682年。名は捷。荘公の子。


おまかせを。


南宮長万
宋の大夫。前682年没。南宮が氏、長万が名。宋随一の猛将で怪力無双の勇者。


これは心強いねっ!


あぁ、ところで、軍の総指揮権は当然こちらのものだろうね?


え?それは・・・まぁ・・・いいかっ!うん、指揮権はそっち持ちでいいよ!



斉都・臨淄


・・・というわけで、宋は出兵を承知したよ!


・・・ちょっとまった、両軍の指揮権は宋閔公が持つのか?


うん、そうだけど、・・・何かまずかった?


いや、宋閔公はお世辞にも有能とはいえない・・・というかぶっちゃけボンクラだからな・・・大丈夫かな?


ま、大丈夫じゃないの?確か南宮長万とかいう強そうな将軍もいたしさ!


それでは、今回は鮑叔に軍を率いてもらいましょう。



魯都・曲阜


殿、敵襲です!斉軍と宋軍が現れました!


何、もう来たのか!?いかんな、今回は野戦は不利・・・


篭城して戦うべきでしょう。まずは敵軍の様子を見てみるべきかと。


そうやな。・・・ふーむ、斉軍は相変わらず重厚な陣構えやな。ん?それに比べて宋軍は隙だらけやないか・・・


ですが、旗印を見る限りは宋軍は宋公自ら出陣しているようですね。おそらく宋軍を叩けば斉軍も退却するでしょう。


うーん・・・・・・


殿!


公子偃
魯の大夫。魯に侵入してきた宋・斉連合軍と戦う。


公子偃か、どうしたんや?


どうしたではありません!今の宋軍なら奇襲すれば打ち破るのは簡単です。是非私にやらせてください!


・・・・・・


・・・いや、まだその時期ではないな。


む・・・それでは失礼します。


・・・殿、公子偃殿の様子を見ると、今夜あたり単独で出撃するかもしれません。ひそかに準備を整えましょう。


なるほど。


そして翌日未明


よし、我が隊は出撃して宋軍を奇襲する!


あれ、ここは「手柄を立てちまえばこっちのものよ!」とか言わないんですか?


それ言うと死亡フラグが立つだろうが!


む・・・公子偃はやはり出撃したか・・・よし、本隊も準備が出来次第出るで!


念のため、斉軍の背後にも部隊をまわしておきました。



そして宋軍の陣地


ふぁぁ・・・まったく退屈だな、魯軍は城にこもって出てこないし、そろそろ適当なところで戻るか・・・


華父督(第五話より登場)

殿、それよりはやく陣を整えたほうが・・・今奇襲を受けるとまずいのですが。


心配ない、こんなところまで出てくるわけが・・・




な、何!?


宋軍兵士
げぇっ!魯軍!


だから言わんこっちゃない!?


た、退却!下がれ、下がれ!


よし、敵は崩れた、追撃するぞ!


こちらも追撃に移る!



一方斉軍の陣地では


なんですって、宋軍が奇襲を受けた!?すぐに救援に・・・



え!?


げぇっ、魯軍!


いつの間に背後に・・・やむをえない。後退!





斉軍、後退していきます!


よし、これで残るは宋軍だけやな・・・このまま追い続ける!


魯・乗丘の地


くっ、もう夜だぞ、どこまで追ってくる気だ・・・(これは魯公だけではないな・・・一体誰が魯軍を動かしている?)


前方に丘が見えます!


よし、そこに陣取って反転攻勢に出よう、殿にお話してくる。


はぁ、はぁ・・・やっと休める・・・


殿!


ど、どうした?


魯軍は追撃を緩めました。そして現在我が軍は丘の上に陣取っています。彼我の疲れは同じ・・・今攻め下れば勝てます!


何?反撃?馬鹿な・・・それより休ませてくれ・・・


・・・(くっ、このボンクラ君主!)ともかく、こちらで陣を整えるしかないか・・・


そして夜明け前


殿!魯軍は必ず来ます。陣立てを早く!


よし、分かった、兵たちを起こして準備しろ。夜が明けたら出撃だ。





ん?宋軍の陣から炊煙が・・・このままでは宋軍が攻め下ってきます。その前にこちらから攻めるべきかと。


よし、分かった。全軍、突撃!



魯軍が突撃してきます!


く、やはり来たか・・・南宮長万殿、頼みます。


任せておけ。こちらも突撃だ!


どうした!?前方が騒がしいが・・・


そ、それが恐ろしく強い将がいて味方が蹴散らされています!このままでは・・・


な、なんやと!?


おそらく宋の南宮長万ですね。こちらも欧孫生殿に出てもらいましょう。私が援護射撃をします!


ああ、まかせな!


欧孫生
魯随一の勇将。魯に侵入してきた宋・斉連合軍と戦う。


フン!


うわぁっ!?



ぎゃっ!




手ごたえがないな・・・魯の弱兵共!俺に勝てるものはいるか!


ここにいるぞ!  我こそは魯将、欧孫生!一騎打ちを所望する!


少しは手ごたえがありそうだな・・・よし、かかって来い!



くっ、手ごわい・・・


ほう、少しはやるようだが・・・   ん?



・・・み つ け た



しまった、突出しすぎたか!? 


遅いっ!



うぉぉぉ!?



よし、今だ! 南宮長万、生け捕ったり!


な、何だと!?南宮長万が捕らえられた!?


もはやこれまで・・・全軍退却!



さて、今回はここまでといったところでしょうか。


なんかあんまり解説するところがなかったわね。


そうですねぇ・・・とりあえずいくつか補足しておくと、この話で出てきた車右というのは君主の馬車に一緒に乗って警護する武人という事ですね。あと、この時代ではまだ戦場の主役は馬車で騎兵や歩兵が主流になるのはもう少し後といったところでしょうか。


何かあったらコメントで質問よろしくね。





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