萌える春秋戦国史 「しゅん☆じゅう」 その26


さて、今回で萌える春秋戦国史も26回目ね。


今回は晋と秦、大国同士の激突を描いていきます。







さて、前回は晋献公の息子夷吾が帰国、晋恵公として即位したところまで話が進みました。


これからどうなっていくのかしら・・・




紀元前651年  晋都・絳


晋恵公
さて・・・里克。


里克
はっ。


そなたのおかげで私は即位できました。しかしそなたは既に二人の君主(奚斉・卓子)と一人の大臣(荀息)を殺しています。そなたと付き合うのは骨が折れる、というより危険です。よって死んでもらう事にしました。素直に自殺すれば跡継ぎは残しますが、嫌だと言えば一族皆殺しにします。


なっ!?それはあまりですぞ。そうしなければ殿が即位する事もなかったでは無いですか?


その通りです、だから、二つに一つ選ぶ機会を与えたんですよ?


ぐっ・・・おのれ・・・!



ふん・・・自殺しましたか・・・よし。早速兵を出して里克の一族を皆殺しにするように!


郤芮
は?しかし、跡継ぎは残すのでは・・・?


約束なんて、破るためにある。違いますか?


・・・了解しました。


ま さ に 外 道


さて・・・里克は死にましたが仲のいい丕鄭や兄上に忠誠を誓った大夫が目障りですね・・・先手必勝、兵を出して討ち取るように!


呂甥
はっ。


こうして、晋恵公は自らの即位に協力した里克や丕鄭、さらに七輿大夫と呼ばれた旧申生派の大夫を次々に殺しました。


ま さ に 外 道


晋軍兵士
君命により、お命頂戴!


丕鄭
しまっ・・・



旧申生派の大夫


わぁぁぁぁ?!



くっ・・・父上、敵は必ず取ります!


丕豹
丕鄭の息子。丕鄭が晋恵公らに討たれた後、秦に亡命した。



なんというか・・・殺しまくってるわね・・・


しかも、晋恵公は秦の支援を受けて即位したのですが、その見返りに秦に土地を割譲するという約束も反故にしてしまいます。


毒を食わば皿まで・・・ということかしら?


しかし、とうとう4年後の紀元前647年、今までの行いに天罰が下ったのか晋に大旱魃が起こりました。この時、晋恵公は大夫の慶鄭を派遣し、秦に食糧援助を求めます。



秦都・雍


秦穆公
さて・・・晋恵公から食糧援助を求めてきましたが・・・どうすべきだと思いますか?


丕豹
晋公が無礼なことは周知の事実です、里克に恩賞を与えると言っておきながら殺し、我が父らをだまし討ちにし、秦への土地も忘れた振りで通し、背徳に加えてこの飢饉です。今こそ晋を討つべきです!


ふむ・・・公孫枝はどう思いますか?


公孫枝
そうですね・・・私はまず食料を晋に送り、その上で晋公がまた背徳を行い、民心が離れた時に晋を討てば良いと思います。


次は百里奚と蹇叔ね・・・そなた達はどう思いますか?


百里
確かに、晋公は恩を仇で返した憎むべき相手かもしれません、しかし実際に苦しんでいるのは晋の人民です。人民に罪はありません。援助すべきです。


蹇叔
私も同じ意見です。


・・・よし、わかりました!早速晋に食料を送り届けるように!


こうして、秦から膨大な量の食料が送られ、晋は救われました。ところがこの翌年、次は秦が大旱魃に襲われます。


こうなると、当然秦は晋に食糧援助を求めるわね。


そうなりますね。ところが・・・



・・・・・・というわけで、是非食糧援助をお願いします。


公子縶
秦の大夫で公室の一員、秦穆公の下で謀臣として活躍する。


食料が欲しいそうね・・・


は・・・?



だが断るこの晋恵公が最も好きな事は相手が弱る様を眺める事よ。



腹の底から“ザマミロ&スカッとサワヤカ”の笑いが出てしょうがねーぜッ!


何だと!?


ふん、食料が欲しければ腕ずくで手に入れることね!つまみ出しなさい!


はっ!


な なにをする きさまらー!



こうして晋恵公は援助を断ったばかりか、この機に乗じて秦に攻め込もうとたくらみます。



ふふふ・・・国が飢饉となれば兵は力を出さないでしょう・・・今が秦を叩く絶好の機会、早速動員をかけなさい!



殿!お待ちください!秦は昨年我が国を助けてくれたのですぞ!その恩を仇で返すとは、義に欠けるにも程がありましょう!


慶鄭
晋の大夫。前645年没。秦が飢饉になった際に、穀物を与えて秦の穆公への恩を返すべきだと主張する。


ふん、下っ端の大臣が生意気な!下がりなさい!


・・・・・・殿は、この決定を後悔するだろう・・・


一方、秦の方では・・・


・・・戻りましたね。どうでしたか?


そ、それが・・・


・・・なんですって?そんな暴言を吐いて追い返されたのですが?


は、しかもあの様子では、それだけでは済まないかと・・・


秦軍兵士
た、大変です!


どうした?


晋軍がわが国の国境に集結を始めました!もうすぐわが国に攻め込んでくるものと思われます!


何っ?!


・・・・・・ぶちり


・・・・・・


と、殿?


・・・・・・あ・ん・の・クソガキゃぁぁぁぁ!





おかしいなぁ…どうしちゃったのかな
困った時は助け合うのは当然のことだよね?
それなのに自分が困った時だけ助けてもらって人が困った時は弱みに付け込もうなんて・・・
ねぇ、私の言ってることそんなに間違ってる?
少し、頭冷やそうか……


な、何か乗り移ってる!?


よし!こうなればあの夷吾の小せがれの望みどおりに食料を腕ずくで略奪してくれましょう!公子縶!公孫枝!すぐに全軍に動員準備を!


ははっ!


百里奚、蹇叔。今度ばかりは・・・


ええ、仕方ありません。


降りかかった火の粉は払わねばいけませんからね。


先鋒部隊の将は丕豹、あなたを任命します。


はっ!


準備が整い次第出撃!


座して死を待つより、食料を奪え!


パンにはパンを、血には血を!晋軍を血祭りに上げなさい!


ウラーーーーーーー!!!!!


こうして、晋の背信に怒り狂った秦軍の士気は燃え上がり、侵入してきた晋軍を一撃で壊滅させた後、晋国内に攻め込みます。逆に晋軍の士気は上がらず、国内の城を立て続けに3つも落とされました。


どう見ても自業自得です、本当に(ry


この後、晋軍も軍を立て直して反撃に移ろうとしますが、秦軍はそれを読んで韓原の地に部隊を展開、迎撃の構えを取ります。


韓原・晋軍陣営


殿、既に秦軍は戦闘準備を整え、我が軍を待ち構えています!



晋恵公

そんな馬鹿な・・・飢饉で困窮している国が何故軍を興せる?それに兵糧の不足している軍の士気が高いはずが・・・


晋軍将校

(・・・それはひょっとしてギャグで言っているのか!?)



・・・不思議がる事はないでしょう、秦軍が強いのは殿のおかげです。


何ですって?生意気な!そちのような不遜の者はいりません、さっさと戦列から離れなさい!


は・・・戦列からは離れますが。しかし、心配ですので、いえ、敗残の始末をつけてから離れます。


な!?縁起でもないことを・・・司馬説!捕らえて軍法会議にかけなさい!


司馬説
晋の大夫。司馬は官職名。


は・・・ですが、軍法より軍議が先です。


む・・・


既に諸将がお待ちです。


ふん・・・ではこの無礼者を捕らえておくように!


・・・危なかったな、すぐに立ち去れ。


いいのか?


何、こんなところで味方の将を減らしても何にもならんよ。


済まない。


一方、軍議の場では。


・・・秦軍は精強で、士気も恐ろしく高いです。まともにぶつかっては・・・


・・・何か打つ手は無いの?


そうですな・・・敵は今まで3戦3勝した事で勢いに乗っています。ですが、そこに付け込んで主力を引き離し、こちらの精鋭で敵の本陣を突けば、あるいは・・・


ふむ。・・・では、韓簡と梁由靡が別働隊の指揮を執って秦の本陣を襲うように。私もこちらに行くわ。本隊は司馬説に指揮を任せます。


 
韓簡
晋の大夫。賕伯の子、韓万の孫。数少ない晋の公族の一人。韓原の戦いでは晋軍の別働隊を指揮した。


梁由靡
晋の大夫。韓原の戦いで韓簡と共に別働隊の指揮を執った。





一方秦軍の側では


ふむ、晋軍も展開を始めたわね・・・だが遅い、今度こそ晋軍を壊滅させるわよ!総員、戦闘開始!


続け!


ウラーーーーーー!!!!!



来たか!韓簡殿、梁由靡殿、部隊を迂回させて秦の本陣を!こちらは何とか持たせます!


よし、先鋒隊は優勢のようね・・・これで・・・




なっ!?


げぇっ!晋軍!


くっ、別部隊がいたなんて・・・


よし、秦穆公を捕らえよ!


こうして、前半戦は秦軍の不意を突いた晋軍が優勢に戦いを進めます。ところが、ここで晋恵公の車が泥沼に嵌って動きが取れなくなることに・・・


よし、このまま行けば秦軍は全滅ね・・・突撃しなさい!


アッーー!?


ど、どうしたの?!


しゃ、車輪が泥沼に!?



くっ・・・何をしてるの!早く出しなさい!


・・・・・・


あれは!?慶鄭、早く私を助けなさい!


・・・殿、私は戦列から外された身です。私がいなくても周りに立派な将がいるので、ご安心を。


動きが取れないのよ!?車を貸して!


いえ、私は戦列を離れろと命令されています、車が無くては離れようがありませんのでご勘弁ください。


わ、分かったわ!悪かったわ!全てを水に流します!


では、その恩に報いるため、救援を頼んでまいります。



秦軍本陣


よし、もう一息だ!


全軍、総攻撃の用意!


くっ・・・もはやこれまでなの・・・?


おい、韓簡殿、梁由靡殿!そっちどころではない!殿が危ないのだぞ!


何?!くっ、引き上げるか・・・


引け、引け!


引き上げた・・・?よく分からないけど、今がチャンスね、急いで軍を立て直して反撃に移ります!



こうして秦軍は危機を切り抜け、逆襲に転じます。この後、総反撃に出た秦軍に晋軍は撃破され、晋恵公を始め、多数の将が捕虜となりました。


くっ・・・まずい、味方は総崩れだ。このままでは・・・


司馬説殿!


慶鄭殿か!


殿も捕らえられてしまったようですし、このままでは全滅、潔く退却すべきです。


やむをえんか・・・



今回はここまでかしら?


そうですね、次回は韓原の戦いのその後についてです。




今回の死亡者


里克
晋の大夫。前650年没。里季子。晋の有力大夫。申生や重耳、夷吾ら公子に同情的で、驪姫を憎む。献公が亡くなり荀息が奚斉を立てると奚斉を殺し、さらに卓子が位につくとこれも殺した。国外に出ていた公子夷吾(恵公)を晋君に迎えるが、その恵公に殺されてしまった。力はあるが、何事においても詰めの甘い人物。



丕鄭
晋の大夫。前650年没。丕鄭父。晋の有力大夫の一人で、里克と行動を共にする。恵公の即位後、秦の穆公の力を借りて郤芮らを除こうとしたが、郤芮に計画を見抜かれて他の里克派の大夫と共に殺された。



賈華
晋の大夫。前650年没。右行。七輿大夫の一人。里克・丕鄭の与党で、元は申生の部下。里克一派の勢力を除こうとした郤芮に殺された。


共華
晋の大夫。前650年没。左行。七輿大夫の一人。里克・丕鄭の与党で、元は申生の部下。丕鄭は里克が殺されたことを知り、共華に帰国の可否を尋ねた。共華は恵公派の動きに気付かず安全だと答えたが、丕鄭は帰国後殺されてしまった。それを気にした共華は危険を承知で国内に留まり、郤芮に殺された


叔堅
晋の大夫。前650年没。七輿大夫の一人。里克・丕鄭の与党で、元は申生の部下。里克一派の勢力を除こうとした郤芮に殺された。

 
騅顓
晋の大夫。前650年没。七輿大夫の一人。里克・丕鄭の与党で、元は申生の部下。里克一派の勢力を除こうとした郤芮に殺された。

 
纍虎
晋の大夫。前650年没。七輿大夫の一人。里克・丕鄭の与党で、元は申生の部下。里克一派の勢力を除こうとした郤芮に殺された。


特宮
晋の大夫。前650年没。七輿大夫の一人。里克・丕鄭の与党で、元は申生の部下。里克一派の勢力を除こうとした郤芮に殺された。



山祁
晋の大夫。前650年没。七輿大夫の一人。里克・丕鄭の与党で、元は申生の部下。里克一派の勢力を除こうとした郤芮に殺された。

 







なお、アイコンは以下のサイトから使用させていただきました。


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