極私家版「大同人物語」

さて、以前コチラの方でヒラコーが作った予告編漫画を紹介していましたがこれを基にした小説も存在するようです。



極私家版「大同人物語」


その起源は誰もが知るとおり、世界最大の同人誌即売会コミックマーケット」を準備・運営するための組織であった。しかしその性格は、2004年を境に大きく変化し、現在は地下抵抗組織のごとき様相を呈している。

2004年始め、東京、足立区で起こった幼児大量殺人事件を発端に異例のスピードで可決された「人権擁護法案新案」、「改正・青少年保護育成条例」の施行によって、この年、アニメ、漫画、ゲームその他の徹底的な規制が始まった。

秋葉原から、中野から、池袋からアニメショップの看板が消え、パソコンゲームの市場は実質上消滅し、数え切れぬコミック誌が廃刊へと追いやられた。

元来著作権などの問題から微妙な立ち位置にいた同人誌は、これによって壊滅的な打撃を受ける。秋葉原の同人ショップは次々と姿を消し、個人蔵の同人誌すら規制の対象とされ、提出無き場合は罰金、場合によっては逮捕すら科せられる苛烈さであった。特に、千葉県で行われた押収同人誌の大量焼却デモンストレーションは、同人オタク達の間で怨嗟を込めて「華氏451事件」と呼ばれ、彼等の復讐の炎をくすぶらせ続けた。

2004年夏、コミックマーケット66の開催が不可能となったという発表を最後に、準備会は解散された。行政はこれを勝利と信じ、犯罪者の群にとどめを刺したと思いこんで安堵した。

しかし、彼等は生きていた。

準備会は地下に潜り、かつての準備会員たちは極秘に連絡を取り合って再起の道を模索した。執筆の場を奪われた多くの作家達もまた、彼等の流通網を頼って、細々とではあるが執筆を続けた(一説によれば、これら地下同人誌の流通に暴力団が関与していたという)。厳しい監視の下、この国から同人誌の火を絶やさぬ為、彼等は必死の努力を続けて来た。しかし、地下出版物としての同人誌の存在が、大衆に、メディアにいっそうの偏見を植え付ける結果となってしまったことも事実である。多くの人々の脳裏に、「オタク=犯罪者予備軍」という図式ができあがりつつあったのだ。

規制の縄は一向にゆるむ気配を見せず、準備会員、同人作家達は次々と検挙されていった。

そして、2005年3月21日、準備会の活動方針を変革する決定的な事件が起きる。

非合法同人誌の執筆・印刷が行われていた地下工場を家宅捜索した警官が、これに抵抗したとして、一名の女性同人作家を射殺したのだ。

ララァの殉死」と呼ばれたこの事件から、準備会内では武闘派勢力が勢いを増し、首都圏を中心にオタク復権を掲げたテロ行為が頻発するに至る。なかでも、2005年8月12日〜14日に渡って戦われた外神田暴動事件、準備会員達が「アスターテ会戦」と呼んだ暴動は、警官隊3名、準備会員7名の死者を出すという凄惨なものだった。

これら準備会の強硬な武闘派姿勢は、抑圧されたオタク達の復讐心を刺激し、彼等の下に多数のシンパを集める結果となった。準備会は「特別混雑対応部隊」を組織し、多数の参加者を吸収して巨大化しつつあった準備会戦闘部隊の指揮を執らせた。

そして今、2006年12月30日、準備会の解散発表から二年半。地下準備会とその下に集ったオタク達によって、最大の作戦が実行されていた。

「池袋奪還『レヴォリューション』作戦」

秋葉原中心街再突入戦『イゼルローン』作戦」

ゆりかもめ及び水上バス掌握計画『アルフォンス』作戦」

そして

東京ビッグサイト占拠作戦『バベルの籠城』」

参加者達はこれを最後の戦いと信じ、寒風吹きすさぶ有明ビッグサイトに立て籠もっていた。いつの日かふたたび、ここに50万人のオタクが集い、コミケットを開催できる日を夢見て

・・・うわ、あの漫画の雰囲気そのままです・・・
つーか、凄い続きが読みたいなぁ・・・