東方キャラで語る飛行機の歴史 その7
「ふーむ・・・「オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?」・・・」か・・・昔のコーエーからこんなゲームが出ていたとは」
「ってちょっとあんた、のっけっから何言い出してるの?このコーナーは東方キャラで語る飛行機の歴史でしょ?ゲームメーカーの黒歴史を持ち出してどうするのよ」
「まぁまぁ、いつもとは少し違う書き出しでしようとしたことだから・・・それに今回のテーマと関係ないわけでもないのよ。」
「へ?昔のエロゲーと飛行機が何か関係あるの?」
「そうじゃなくって、今回の飛行機は現在の有名メーカーの初期の黒歴史な飛行機ってこと。」
「あぁ、そういうこと・・・で、今回はどんな飛行機をやるのかしら?」
「今回はアメリカの双発戦闘機マクダネルXP−67ね。」
「え、それってあのF−4ファントムとかF−15イーグルを作った*1ところか?」
参考:自衛隊で使われているF−15,F−4の勇姿
「現在はボーイング社になっているこのマクダネル社だけど、最初に設立されたのは1939年と第二次世界大戦の直前なの。メーカーの中では比較的新興のメーカーね。そのせいなのか、マクダネル社は最初の作品でいきなりアメリカ陸軍に対して長距離戦闘機の設計を提案したの。」
「って、いきなり技術的に難しい戦闘機か?無茶するなぁ・・・」
「最初は小型輸送機とか練習機とかそういう無難なもので地力を付けてからそういうのをやると思うんだけど・・・」
「どうもこの会社はそう考えなかったようね。しかもこの提案された戦闘機は胴体内にエンジンを埋め込んで*2延長軸で後方の推進式*3エンジンを回すといった野心的な設計だったのよ」
「いや、野心的というか・・・いくらなんでももうちょいまっとうな形にならないのか?」
「とはいえ、アメリカ陸軍もさすがに新興メーカーにこんな設計は無茶とみて試作前に不採用となったんだけど、よっぽど面白い会社と思ったのか開発契約を結ぶことにしたの。これに応えて改設計を施したのが今回扱うXP−67バット双発戦闘機よ。」
「なだらかに主翼と胴体が溶け合ってるというのか・・・というかこれは変だろ。」
「まぁ、今だったら「ブレンデッド・ウィング&ボディ」とか言われるのかもしれないけどね。先進的な設計ってことにしておきましょう。」
「ところで、形はともかくとして肝心の性能のほうはどうだったの?」
「この機体は1350馬力の液冷エンジンにターボチャージャー*4搭載、コクピットは与圧式*5を予定していたわ。」
「ふむふむ、それで武装は?」
「武装に関してはこの機体は飛びぬけていて、37ミリ機関砲6門もしくは75ミリ砲を装備することになっていたのよ。しかも最大速度は760キロを狙っていたり。」
「いや、37ミリ機関砲6門ってソ連軍みたいに戦車でも撃つ気*6だったのか!?」
「あと、最大速度760キロってかなり凄いけど・・・本当にそんなの出るの?」
「まぁ、それはあとで話すとして・・・XP−67試作一号機は与圧コクピットと武装なしの状態で1943年12月に完成したわ。ところがエンジンの試運転中にいきなりエンジンが発火しちゃったり。」
「何とか44年1月には初飛行にこぎつけたんだけど、4回目のテスト飛行でエンジンのベアリングが焼きついちゃって機体ごと会社に戻されることになったわ。」
「どうも会社が出来たばかりのマクダネル社には防熱とか冷却のノウハウがほとんど無かったのが原因のようね。それでもなんとか修理も終了して5月には陸軍の評価試験までこぎつけたわ」
XP−67評価試験の様子(イメージ映像)
「うーん、操縦性はそんなに悪くないんだけど離陸距離が長いし加速、上昇性能もいまいちだし・・・ひょっとしてこれ」
「でっかいアンダーパワーです。ついでに速度も650キロしか出ないです。」
「あと、方向安定もおかしいような・・・なんか飛行中に蛇行するんだけど」
「そ、そう・・・じゃ水平尾翼を改良しておくわね。」
数日後
「水平尾翼は直ったわ。それじゃ次の飛行に・・・」
「・・・どうしよう。こりゃ修復不能だぞ・・・」
「これで試験の続行は不可能になり、2号機の完成の目処も立っていなかったのでXPー67の開発は打ち切りになったわ。」
「アメリカ陸軍もどうもこの飛行機が本気で欲しかったわけではなくて、気合だけはいっちょまえのマクダネル社に腕慣らしをさせてみたかったようね。この後マクダネル社はアメリカ空軍のいろいろ軍用機開発に関わることになるのよ。」
「でも、なんかF−4に行くまでにこんなのも作ってるのね、この会社」
参考資料:
- 作者: 岡部ださく
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*2:普通は機首にエンジンを付けます
*3:航空機においてプロペラが機体後部に設置されている形式のことで、プロペラの回転によって生ずる空気の流れは機体を"押し出す"形になる。これに対して牽引式(トラクター式、Tractor configuration)では、プロペラが機体前部に設置されるため機体を"引っ張る"形になる。
*5:与圧(よあつ)とは、圧力を与えること。とくに、乗り物の内部を一定の気圧に保つことを指すことが多い。
高高度を飛行する航空機や、宇宙空間にある宇宙船や宇宙ステーションのように、機体外の大気が希薄あるいはゼロの空間では、機内の酸素分圧を人間が生存できるレベルに保つ必要がある。このために、酸素マスクを用いるか、室内全体を加圧するかのいずれかの手段が多く採用されている。後者が与圧と呼ばれる。
*6:ソ連軍は大口径機関砲による地上襲撃を頻繁に行っていました。後にアメリカもGAU-8 Avengerというアホみたいな機関砲を開発