萌える春秋戦国史 「しゅん☆じゅう」 その38

さて、今回が今年初めての萌える春秋戦国史ね。


今回からは第4部ということで、新しい展開になっていくぜ。







さて、今回は晋文公が亡くなった直後から話を進めるわ。この少し前に晋は秦と連合して南の鄭を攻撃、かつて保護していた公子蘭を鄭の君主として立てたんだけど、この時秦も鄭に自国のスパイを送り込んでいたの。なんとこのスパイが鄭の城門の鍵を手に入れて秦穆公に連絡を送ったわ。


ふむふむ。



紀元前627年 秦都・雍



秦穆公
ふむ・・・これは・・・よし・・・


百里
殿、どうされたのですか?


百里渓ね・・・いいところに来たわ、こいつをどう思います?


鄭に送ったスパイからの連絡ですか?・・・鄭に軍を送れば城門が開く・・・本当ですか?


もちろんです、これなら一兵も損なわずに一国が手に入るでしょう。


お待ちください、これは話がうますぎます。軍を疲れさせて遠くを襲うのはとても良策とは言えませんし、鄭に気づかれては向こうはすぐに防御を固めてしまいます。ましてこちらは大軍で向かうのですから気づかれないはずは無いでしょう。


蹇叔
そうです、それに無理に攻め取ったとしても遠隔の地をどうして維持できるのですか?


ここは出陣は取りやめた方が・・・



・・・・・・


殿?






え、ちょっ!?


あなた達に何が分かるのですか!私は既に決めています!下がりなさい!


はっ・・・


孟明視!西乞術!白乙丙!あなた達に兵を授けます!直ちに鄭へ向かうように!


は、はいっ!


こうして秦穆公は孟明視、西乞術、白乙丙の3将に兵を授け、鄭に出発させたの。


出発前


孟明視よ・・・私はあなたの出発は見送れますが無事の帰還は迎えられそうにありません。


息子達よ、おそらく晋軍は我が軍を殽の地で迎撃するでしょう。私はそこで貴方達の骨を拾います。


・・・・・・


さて、こうして秦軍は鄭に向けて出発したんだけど、その途中で周王朝の首都の洛陽を通過したの。そのとき、王族の一人である王孫満という人物がこんな言葉を残しているわ。


王孫満
周の王族の一員。特に業績を残したわけではないが歴史の節目節目に現れる人物。



秦軍は軽率で無礼だから必ず敗れます。軽率な者には深謀が無く、無礼な者は硫略です。険要の地に赴くのに、深謀が無く硫略では敗れぬはずはありません。


さて、そうこうしているうちに秦軍は鄭に接近したんだけど、途中で鄭の商人弦高に見つかってしまったの。この商人は抜け目の無い人物で秦の将孟明視に謁見して時間稼ぎをしているうちに配下を鄭の首都新鄭に急行させたわ。この急報を受けて鄭穆公は大急ぎで守りを固めたの。当然鄭に送ったスパイも発見されてしまったわ。


弦高
鄭の商人。鄭に向かう秦軍を発見、時間稼ぎをして鄭に連絡した。


やっぱりうますぎる話は怪しいという事か・・・


くっ、作戦は失敗ですか・・・こうなっては仕方がありません、帰還します!


しかし、我々は片道分の食料しか持ってきていません。


このままでは戻れません・・・どうしましょう?


・・・確か近くに晋の属領の滑がありましたね。そこで物資を手に入れて帰還します。


こうして、秦軍は晋の都市を攻撃した後、帰還の途についたわ。当然晋にも急報が届いたんだけど・・・



晋都・絳


先軫
・・・秦軍がわが国の領土である滑を攻撃したと連絡が来た。秦は欲のために民を働かせている。これは天与の機会。敵を許してはならない。一気に秦軍を攻撃すべき。


欒枝
し、しかし先君文公が帰国できたのは秦穆公のおかげ、その恩も返していないのに秦軍を攻撃するのは・・・


秦はわが国の喪を悲しまず、わが国と同姓の鄭を攻撃した。秦には礼が無いからいつまでも秦の恩を考える必要は無い。


晋襄公
・・・わかりました、秦軍を攻撃します。全軍に動員命令を!


ははっ!


それから・・・士会。


士会
はい、何でしょう?


我が軍だけではおそらく手が足りない・・・姜戎氏(戎の一派。この時秦に圧迫され、晋に移り住んでいた)に援軍を要請して欲しい。


分かりました。



・・・というわけで、我が軍は殽で秦軍を迎撃します。援軍をお願いします。


姜戎氏の族長
わかった、我が族を追った秦に復讐するいい機会だ。兵を出そう。



こうして、晋の全軍が出動し、殽の地で秦軍を攻撃する事になったわ。




もうすぐ殽に差し掛かりますね・・・斥候は戻りましたか?


ええ、今戻ってきたところです。


それで、晋軍の動きは・・・?


秦軍兵士
は、殽には晋軍の姿は見当たりませんでした。


よし、では全軍前進!




来た・・・攻撃開始。



晋軍兵士
ウラーーーーーー!!!!


げぇっ!晋軍!


ど、どうしました!


晋軍の待ち伏せです!先鋒部隊が崩壊しはじめました!


な!?ど、どうして・・・


こうなっては下がるほかはありません!


・・・全軍、後退!


一方その頃 秦軍後方では


・・・ようやく到着できましたね。戦闘は既に始まっているようですが・・・


秦軍の陣形は乱れている。今がチャンスだ、攻撃開始!





た、大変です!


今度はなんですか!


後方に敵が出現しました!


くっ・・・これまでですか・・・


こうして挟撃を受けた秦軍は殽の地で大敗を喫したの。指揮官の孟明視、西乞術、白乙丙の三人は捕虜となり、秦軍は壊滅的打撃を受けたわ。


ふむふむ。


捕虜となった秦の三将は晋都の絳まで連れて行かれたわ。普通ならここで殺されるところだったんだけど・・・


何かあったのかな?


ええ、秦穆公の娘で晋文公夫人の文嬴がこのことを聞いて晋襄公に直訴したの。


文嬴
秦穆公の娘、晋文公の夫人。殽の地で捕らえられた秦の三将を釈放するように晋襄公に頼んだ。


そんな!孟明視達が捕らえられた・・・?このままでは殺されてしまう・・・どうにか助けないと・・・



・・・殿、話があります。


ん?なんですか?


あの秦の三将が我が父(秦穆公)をそそのかして秦と晋を争わせたのです。我が父はあの三人を殺しても飽き足らぬでしょう。殿があの三人を殺すまでもありません。帰国すれば、あの三人は処刑されます。我が父を喜ばせてはくれませんか?


・・・わかりました。秦の三将を解き放ちましょう。


こうして秦の三将は釈放されたの。ところが・・・


数日後


・・・殿。あの秦の囚人はどうなりました?


・・・それが、文嬴が釈放するようにといったので私は許しました。


なっ・・・!?  武人が努力して戦場で捕らえたものを婦人の言葉で釈放するとは何事か!我が軍は何のために戦ったのですか!これではいずれ晋は滅びますぞ!  ・・・失礼する!


・・・私は・・・間違ったの・・・?


この後、晋襄公は追っ手を出したけど、秦の三将は間一髪で秦の領内に逃げ込んだわ。




秦都郊外


・・・この戦いで我々は万を超える戦死者を出してしまいました・・・自決して殿に詫びるべきではないでしょうか・・・


いいえ、いったん君命を拝せば必ず復命しなければなりません。


途中で死ぬことは君命を放棄することになります。ともかく戻って復命すべきです。


・・・・・・あ、あれは!?


・・・・・・


と、殿!?申し訳ありません、私は・・・!


・・・いいえ、私が百里渓と蹇叔の言葉に従わなかったためあなた方を辱めてしまいました。罪は私にあります・・・


殿・・・


それに私は一度の失敗で今までの功績を消すような事はしません。どうか今後もわが国のために働いてください。


・・・はい!


この後秦穆公は孟明視、西乞術、白乙丙の三人に再び国政を任せる事にしたわ。




さて、この後しばらく秦は大人しくしていたんだけど、殽の戦いの後今度は狄が晋に攻め込んだの。晋軍と狄軍は箕と呼ばれる場所で激突したんだけど、大軍が展開しにくい地形のせいで晋軍は苦戦を強いられたの。


箕 晋軍本陣


駄目です、敵の勢いが止まりません!


既に前線が破られました、このままでは危険です!


・・・・・・兵をまとめて。陣を進める。


!危険です、死ぬつもりですか!?


士会・・・このままでは陣が破られる。後方の殿も危ない。あなたは下がって殿を守って。


ですが・・・


・・・匹夫の身で殿に無礼な振る舞いをしたにも関わらず、殿からはお咎めが無い。自分で自分を討つより無い。


!先軫殿っ!


狄軍兵士
ウラーーーーーーー!!!!


ここは・・・通さない・・・・!





一方その頃、晋下軍の陣


胥臣
あれは・・・先軫殿の中軍が進んでいる・・・?先軫殿は囮になっているの?


郤缺
分かりません・・・ですが、敵の攻撃は中軍に集中しています。一気に手薄な敵の本陣を襲いましょう!


よし、前進!




・・・敵の攻撃が止んだ?一体何が・・・


ほ、報告します!


ちょうどいいところに・・・何があったの?


は、郤缺殿が狄の本陣を襲撃し、指揮官の白狄子を捕獲しました!


!それで急に撤退を・・・それで、先軫殿は・・・


・・・残念ながら・・・


・・・なんということ・・・


こうして、箕の戦いで晋は辛くも勝利を収めたの。この後、先氏の家は先軫の子の先且居が継ぐ事になるわ。


先且居
先軫の嫡子。箕の戦いで先軫が戦死した後、父の後をついで晋の宰相となる。



今回はここまでかな?


そうね、次回も晋を中心に話を進めていくわよ。


それでは、また次回に。



今回の死亡者


先軫
重耳の側近。優れた武勇が狐偃の目に留まって重耳に仕える。後の城濮の戦いでは中軍の将に任命され、その後も晋の宰相として働いたが、箕の戦いで壮烈な戦死を遂げる。





なお、アイコンは以下のサイトから使用させていただきました。


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